投資のためのデータサイエンス

個人の投資活動に役立つデータ分析にまつわる話題を綴ります。

【焦点】不動産投資について

今週の週刊ダイヤモンドの特集記事は「(相続・副業の欲望につけこむ不動産投資の甘い罠」である。これに対して、ある著名な資産運用コンサルタントは、「書いてあることはその通りだが、興味のない人は見なければいいしやらなければいい」というような批評をしている。

この背景には、2015年の世界同時株安で金融商品では利益が得られなくなり、一部の資産運用コンサルタントが不動産投資部門にコアビジネスをシフトしたという事実がある。投資信託などの金融商品ではどのようにアセットアロケーションをしてリスクを抑えようとしても、金融商品の価格時系列にはかなりの(感覚的には0.7以上)相関があり、いくら上手にポートフォリオを組んでもボラティリティは小さくない。このようなコンサルタントにとって、今回の週刊ダイヤモンドの記事は、内容は否定しないものの、いたずらに投資家の不安をあおるもので、営業妨害であると言いたいのであろう。

しかしこの記事の内容を見ていると、空室リスクを業者が(オーナーの負担を減らすため)一部肩代わりするといった、首を傾げる提案がなされていたりする。様々なビジネス上の工夫によってある程度の空室リスクを業者の側から減らすことができるのかもしれないが、これは「空室リスクはオーナーが負う」という大原則をぼやかすにすぎず、自分には詐欺に近いものに見える。

自分も実家の都合上小規模ながら賃貸経営をしているが、最初のテナントが見つかるまでに数ヶ月かかり、空室リスクを肌身で実感した。そもそも昨今の賃貸市場競争激化もあり、また自分の場合は初期投資が非常に大きいので、賃貸で儲けようとは全く考えておらず、むしろ「よいテナントさんに入ってもらって地域住民としての責任を果たす」事を重視している。

不動産投資は、REITのような投資信託なら少額投資が可能だが、実物資産投資なら一件一千万円以上の高額投資になるこは避けられない。投資額が高額ならボラティリティの規模も高額である。いくら海外視察ツアーなどをしても、不動産価格変動要因の全てを把握することは不可能で、金融資産よりも多様な価格変動要因があるだろうことが想像される。自宅用不動産購入なら一般的にはサンクコストになり今後のアクションに影響しないが、借金をしてまで自分と関係のない場所の不動産に投資するならそれだけのリスクを覚悟してどのような状況になったらどう行動するかの心構えが必要だろう。あるコンサルタントの言うように「日本政府と同じポジションをとればいい」といって借金をして投資するのは合理性云々の前にメンタル要因に支配されかねない。