投資のためのデータサイエンス

個人の投資活動に役立つデータ分析にまつわる話題を綴ります。

投資に役立つ統計学とデータサイエンス

投資と統計学
 統計学はしばしば、不確実な条件の下での意思決定の科学と説明される。投資家やトレーダーによってなされる意思決定の大部分は、我々の知識が不完全で、結果が不確実なところでの意思決定である。統計分析の手法を適用できることは、投資家が意思決定を改善し、迷信や当て推量を取り除くことに役立つ。
 統計学はまた推論の科学でもある。投資ポートフォリオの構築には将来についての推論を行うことが必要となる。推論を行うにあたっては不確実性の程度を理解することが有利となり、統計学はこれらの問題を解くのに役立つ。一般的観点では、予測は完璧であるか役立たずであるかのどちらかである。統計学的視点で見るならば、予測が定量的なレベルの有効性を持つような中間的な場所が存在する。
 金融市場においては多くの統計学の利用がある。統計的な金融予測の一例はアルトマンのZスコアである。これは企業が向こう2年以内に倒産する確率を計算するのに広く用いられている。

投資とデータサイエンス
 トレーディングデスクでは、歴史的に「分析屋」が例えば市場価格に関する構造化されたデータを扱っていたかもしれない。今日では分析屋トレーダーは価格付けに関する時々刻々のデータを分析していることに気づくかもしれない。それには注文台帳の分析も含まれる。そこには決して実行されなかった注文にまつわる重要な情報が含まれている。トレーダーは活動レベルを見るために、ショッピングモールや工場の駐車場の衛星データを分析し、ビジネス活動についての予測をしているかもしれない。トレーダーはニュースレポートのテキストを分析して企業行動のアナウンスを探し出し、自動実行のトレードアルゴリズム用に(潜在的に)使う。意味分析あるいはオピニオンマイニングは金融取引の文脈で頻繁に言及される。これは金融市場においてマーケットの意味あるいは投資家の総合的な態度を同定する一種のデータマイニングである。
 金融は常にデータにまつわるものである。それゆえ金融業界はデータサイエンスの分野の初期の採用者の一つである。金融機関はデータアナリティクスの最初期のユーザでありパイオニアである。データサイエンスは金融業界内で、リスクマネジメント、不正検知、アルゴリズム取引といった多様な分野で幅広く用いられている。
 リスクマネジメントはデータサイエンスが金融の世界で用いられている重要な分野である。リスクマネジメントは学際的な分野である。そこでは数学・統計学・問題解決の知識が必須である。リスクマネージャーは会社内の財務的損失の頻度や厳しさを測定することをねらいとし、データはこのタイプの分析の中核をなす。
 金融機関が直面するであろうリスクにはさまざまなものがある。これらのリスクを管理するための主要なステップは、リスクの同定、リスクの測定、リスクの優先順位付けである。金融機関の日常の業務運営により収集されるデータは大量である。金融機関はリスク管理モデルを改善するために、これらのデータに関してモデルを訓練することができる。データサイエンティストは相手方の振る舞いを分析するための機械学習アルゴリズムを用いて、金融機関が直面している相手方のリスクを分析することができる。
 金融機関は顧客データを分析し顧客の関わりについての洞察を得るためにさまざまな手法を用いている。このようなデータを用いることにより、金融機関は顧客ニーズをよりよく理解でき、それは収益の向上に結び付く。リアルタイムアナリティクスのおかげで、データサイエンティストは顧客の行動から洞察を得て、よりよい意思決定を行うことができる。金融機関は消費者アナリティクスを使って顧客の生涯価値を計算し、クロス販売を改善して、どの市場セグメントに焦点を当てるべきかを決める。
 不正(詐欺)は金融機関にとって最大の関心事である。不正のレベルは取引数にともなって年々増大している。金融機関内のデータサイエンティストは現代データアナリティクス手法を用いてリアルタイムで不正を捉え損失を最小化することができる。データサイエンティストは詐欺の兆候である不正な行動を検出するのに統計的手法を用いることができる。機械学習ツールは取引データ内の異常なパターンを同定して金融機関に特定の振る舞いについて検査するよう注意を発するのに用いられる。
 アルゴリズム取引は、金融機関が新しい取引戦略を開発し実現するための複雑な数学式の利用と高速な計算からなる。ビッグデータアルゴリズム取引に大きな影響を及ぼす。アルゴリズム取引に用いられるデータはしばしば巨大なデータ流からなり、その流れからシグナルを見つけ出すための統計モデルを含む。分析エンジンの目的は膨大なデータセットからすばやく有用な情報を抽出することにより市場予測をすることである。