投資のためのデータサイエンス

個人の投資活動に役立つデータ分析にまつわる話題を綴ります。

「ハウステンボス」再生の現場を訪問して(一部加筆修正)

先週、家族の希望で長崎県ハウステンボスへ行った。

ハウステンボス1

最大の目的は一千万個以上のLEDライトによる「光の王国」を見ること。

ハウステンボス2

ハウステンボス訪問はこれで3回目。最初は開園後2年経った1994年。前回ハウステンボスを訪れたのは2009年11月。その時の目的もイルミネーションだった。しかし前回訪問時は、HIS澤田社長の就任前で、アジア客誘致を主力とした再建がリーマン・ショックで再び頓挫していた時期だった。その後澤田社長の「マジック」で連続黒字、入場者は前回訪問時のほぼ倍になっていることは事前にネットで調べて分かった。民放テレビでのハウステンボス特集番組も見た。

開園時の初期投資額は2,200億円という。20年前なので原子力発電所1基の建設費が3,000億円未満とみられ、ほぼ同規模の投資額。前身の「長崎オランダ村」を少し離れた所に発展させたものだが、自治体も関与した地域ぐるみの大プロジェクトで、園内には天皇陛下マイケル・ジャクソンも宿泊した全室スイートのホテルもある。地域の経済や雇用を支えており、開園以来赤字続きでも簡単に潰せないであろうことも常識的にわかる。

帰路に着く前に土産店で澤田社長の著書「運をつかむ技術」(小学館)を買い、帰路に読み終えた。言い方は違うが、「ポジティブ思考」「リスクをとって挑戦する」「参謀スタッフに『空気を読まない人』を入れてイノベーションを生み出す素地を保つ」など、一般的に起業家にとって重要な事として言われていることである。しかしこれほどの実績をあげた澤田社長の言葉には重みがある。

園内で特に注目したのが「ハウステンボス歌劇団」。2013年7月結成。宝塚やOSKのスターを招聘。アーティスト養成学校も設立。第一期生はまだ1年経っていないのでステージには上がっていない。これも澤田社長が黒字経営を積み上げてきたからこそできたといえよう。このような個人が前面に出るパフォーマンスはTDLUSJではあり得ないが、個人的にはこの方が見ていてはるかに楽しい。ステージや客席前で踊って歌っている女性達の笑顔からは夢や希望が伝わってくる。

主なコスト削減策はネットなどにも書かれているが、実際に訪問して気がついたコスト削減点には以下のものがある。

・オフィシャルホテル(ホテルアムステルダム)ではインターネットが全く使えない。

・(1994年に訪問した時のビデオと見比べて)ホテルルームは壁の張替えやトイレの交換はしたようだが、それ以外(カーペットを含む)はほとんど変わっていない(ただまだ20年ちょっとなので古臭いイメージはない)。

・ホテルのテレビは地デジと園内ガイド番組しか見れない。

・夜のプロジェクションマッピングには会場整理等のスタッフがほとんどいない。

・(TDRと比べて)開園中の清掃フタッフや巡回・案内スタッフが非常に少ない(ほとんどいない)(澤田社長著書によれば清掃は朝やっている)。

・JR駅側再入園ゲートにスタッフが常駐していない(自分で再入園スタンプを押す)。

・園内ガイド用スマホアプリはあるが、当日のイベントスケジュールやバス時間など、頻繁な更新が必要な情報は提供されていない(自分が確認した範囲で)。

これらのコスト削減策はコスト対パフォーマンス(顧客満足度)で判断していると推察される。一方で澤田社長の著書にあるように、従業員の挨拶など接客は前回訪問よりも確実に改善していることは実感した。

年間売上高(2014年付近)はTDRが3,413億円、USJが821億円に対し、ハウステンボスは216億円に過ぎない。TDRUSJと比べて立地条件が不利なことは変わらない。澤田社長はロボット導入による格安ホテル、医療ツーリズム導入など「観光ビジネス都市」構想を次々と打ち出している。今後の発展に期待したい。