投資のためのデータサイエンス

個人の投資活動に役立つデータ分析にまつわる話題を綴ります。

経済的付加価値(その2)

高度成長時代、日本は原材料や安い化石燃料を海外から輸入し、製品として付加価値をつけて海外に売って稼いでいた。しかし現在ではこれは一部の特殊技能を必要とする企業に限られているといってよい。それらはグローバルなサプライチェーンに組み込まれていることが多い。現在の日本はむしろ海外への投資収益で主として稼いでいる。最近の記事によれば、2014年4月の国際収支は、貿易収支は7,804億円の赤字であったが、海外子会社や証券投資から得られる配当・利子収入の第1次所得収支の黒字額が伸びたことで、経常収支はなんとか黒字を保った形となっている。

ではこれから日本は何に特化して付加価値をつけていけばいいのか?すなわち何で飯を食っていくか?これは寺島実郎先生などの論客が常に問いかけている問題点である。

一つには「誰にもまねできないものづくり」ということになるのであろう。しかしこれができる分野はどんどん狭まっている。携帯電話のある部品など、未だに日本のあるメーカーが圧倒的な世界シェアを持っている分野もあるが、家電・半導体などは海外メーカーに完敗してしまった。

グローバルビジネスに身を置く論客が繰り返し論じているように、東南アジア諸国が作れるものを作るのでは絶対に勝てない。人件費の差が圧倒的にあり、他にどんなに努力してもコスト面で勝てないのである。

下請けを垂直統合してすりあわせで製品を作る分野においては、日本の企業はまだ比較優位を持っている。具体的には、自動車・発電プラントなどである。これは、自動車は非常に部品数が多く、それらをいちいち契約ベースで調達していたらそのコストだけで膨大になってしまうためであると言われている。日本メーカーの自動車は故障しにくいことは海外でも一般的に認知されている。原子力においても、世界の三大勢力は、東芝・WH、日立・GE,三菱・アレバである。自動車メーカーにしても原子力プラントメーカーにしても、すでにグローバル企業となっており、下層の企業群はまだ日本企業が多いかもしれないが、将来的にはグローバルなサプライチェーンで、資源採掘・部品製造・製品組立などがグローバルに最適配置されるであろう。その中に一部日本を拠点とする企業が組み込まれ続けるであろうが、その割合はだんだん減っていくであろう。日本人がそれらの企業グループのスタッフとして働くことは今後もあり得るであろう。

昨今のような経済成長の鈍化や失業の増大は日本だけでなく先進国全般に見られる傾向である。日本が付加価値をつけられる分野はどんどん狭まっている。機械やコンピュータとの競争に負け、新興国との競争に負けているのである。

特に日本の地方経済は、付加価値を生み出すことが非常に難しくなっている。日本のコメは東南アジアの同等産品よりも10倍高いと言われている。800%という関税をかけて、消費者の富を農家に強制的に移転しているわけであり、公正な競争をしていない以上、経済的にそれだけの付加価値を生み出しているとはいえない。地方自治体の財源も7割~8割を地方交付金に依存している自治体もざらにある。地方経済は全く自立しておらず、規制と補助金漬けになっているといえよう。

モノづくりでなく、イギリスのように対外資本収益で稼ぐ国家になるべきと指摘する経済学者も多い。

「経済的付加価値」の問題はもっと奥が深い。また改めて考察したい。