投資のためのデータサイエンス

個人の投資活動に役立つデータ分析にまつわる話題を綴ります。

経済的付加価値(その1)

経済的な付加価値はいかにして創出されるのかをあらためて考えてみたい。

国民総生産=消費+投資、などの定義式はある。あるいは国内総生産=国内の付加価値額ー中間投入、である。

ではこの「国内の付加価値」とは何であろうか。

まず、簡単な例として、木工品を考える。原材料である木材・塗料や包装材を20円で購入し、職人が彫刻や塗装などを施し、それが100円で売れたならば、80円は付加価値である。昔はこれらのことが日本の中で閉じていたので、比較的わかりやすかった。しかし現在では、それと同じ木工品を、アジアのどこかの国で製作すると、原材料費10円、職人の付加価値額20円、合計30円でできてしまい、輸入の運送コストや販売コストを含めても40円で日本で売ることができてしまう。この場合日本での付加価値額は販売コストの5円だけになってしまう。

それでは、海外に移転できない、日本国内の直接的サービスはどうであろうか?この前夕食をとった吉野家の女性店員は日本人ではなかった。最低賃金は日本国内でも場所により異なるが、この辺では一時間あたり900円である。日本人の店員を雇用するなら、最低時給900円を支払わなければならない。これが国籍に関係なく適用されるならば、昨日のアジア人店員の時給も900円である。詳しいことはわからないが、日本人でなくあのアジア人を店員として雇用することにより、人件費がより低く抑えられるのではないか?たぶん雇用保険などの社会保障費が違ってくるのではないかと思う。彼女にとって、母国で働くよりも日本で働く方がはるかに高い給料をもらえることは確かである。もちろん、彼女が母国へ送金していたり、近々本国へ帰るならば、彼女の稼いだ給料は日本国内の付加価値ではなくなる。このように、日本国内の直接的サービスの付加価値も必ずしも日本に残るわけではない。尚、吉野家だけでなく、あるスーパーのレジにも中国人の店員が働いていた。日本はこのような労働のためにはビザを出さないので、留学生のアルバイトとみられる。

上の二つの事例からもわかるように、「大収斂」はどんどん進行している。

かつて、私の叔母二人は、叔父の空調会社でタイピストとして働き、それなりの給料をもらっていた。ワープロの普及でタイピストは不要となったが、まだ他人の書いた手書き原稿をタイプする職業としては存在していた。しかし昨今ではほとんどの人が自分でワープロソフト上で文書を作成できるので、単なるキーボード入力労働者はほとんど不要になった。

上記のように、IT化・機械化によって、単純労働は機械やコンピュータに置き換えられていく。それはIT化・機械化した方が圧倒的にコストが下がるからである。伯父がやっていた旋盤も現在は完全に数値制御機械に置き変わっている。一般的に製造業の方がサービス業よりもIT化・機械化がしやすいので、その分労働生産性は高くなる。

(続く)