投資のためのデータサイエンス

個人の投資活動に役立つデータ分析にまつわる話題を綴ります。

【焦点】東京一極集中は止まらないのか?

自宅から東海道線で西に向かうと、相模川を渡り平塚を過ぎた辺りから緑の多い田園風景に変わっていく。この景色の変化はここ20年位あまり変わっていない。20年ほど前は都会の喧騒から自然の多い所に来たということで心が豊かになる気分であった。しかし現在では東京あるいは横浜から離れるにつれて何か寂れて活気がない、ということばかり感じるようになった。若者を中心に人通りで賑わっている大都市にいる方が心がウキウキしてくる。郊外の街に降り立つと、ここではやはり若者は住み着かず、いずれ東京近郊に出ていってしまうのだろうなという考えが頭に浮かんでしまう。

総務省が本年1月31日に公表した住民基本台帳に基づく平成28年の人口移動報告によると、東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)は、転入者が転出者を上回る「転入超過」が11万7868人だった。前年より1489人少なく、5年ぶりに減少したものの、転入超過は21年連続となった。一極集中に歯止めがかかっておらず、東京圏への転入・転出を32年に均衡させる政府目標の達成は困難な状況とのことである。

例えば横浜方面でより詳しく言うと、若い世代が転入してきているのは川崎市横浜市港北区鶴見区など東京に近い地域である。川崎市への転入者を年代別に見ると(下の図)、若い世代が圧倒的に多い。横浜市でも東京から遠い地域は高度成長期に団塊の世代が多く移り住んだが、その子どもたちの多くはより東京に近い場所に引っ越してしまっている。最近野村総研が発表した予測では全国の空き家率はH25年の13.5%からH45年には30.2%になるとされている。 日本全体で少子高齢化が進行している中で、この流れは必然なので仕方ないと言ってばかりもいられない。若い世帯の転入の多い地域の待機児童問題、東京中心部の高齢者施設の不足問題などがさらに深刻になる。

また、これは別途ここでも考察している「日本型雇用システム」の問題とも関連している。明確なジョブ・ディスクリプションがなく、各ワーカーが様々な役割を演じて相互補完しながら業務をこなしている組織では、やはり同じ時間に同じ場所に集まって仕事をする必要性が高まる。ICTがこれだけ進歩してもテレワークはなかなか主流にはならない。政府の言っているような小手先の「働き方改革」や「地方創生」では現在の東京一極集中の流れは止められない。