中心極限定理へ進む前に、モーメント母関数について記述しておく必要がある。
確率変数Xが与えられたとき、その確率密度関数をf(x)とする。以下の量(ここでは連続の確率変数とする):
は、Xのk次モーメントと呼ばれる。
「モーメント母関数」は、確率変数Xの全てのモーメントを変数tの単一のべき級数にまとめるすぐれた方法である。これは以下のように定義される:
期待値をとるという面からtを定数とみなせば、期待値の線形性より以下のようになる:
それゆえ、tのべき乗の係数はモーメントをkの階乗で割ったものとなる。
モーメント母関数をk回微分してt=0とおけば、k次のモーメントが得られる:
(例1)パラメータpのベルヌイ分布のモーメント母関数は以下のようになる:
ベルヌイ分布の確率変数Xは0と1しかとらない。つまりなので、Xのk次のモーメントは最初のモーメント(すなわちp)に等しい。実際、モーメント母関数をk回微分するととなり、t=0を代入するとpとなる。
(例2)分散、平均の正規分布:
のモーメント母関数は以下のようになる:
上の式の最後の部分の分子の2番目のカッコの中の平方を完成させ、xと関係ない部分を積分の外に出すと以下のようになる:
上の最後の式のカッコの中は、正規分布の全区間にわたる積分なので1になる。したがって:
となる。
(モーメント母関数の一意性)が、変数tの区間 ]上に存在するモーメント母関数(それぞれ)を持つ確率変数であるとする。もし、
]
ならば、XとYは同じ累積分布を持つ。つまり、全ての実数aについて、が成立つ。